【Weekly企画】真・桃太郎 その1 2003.08/08 p.m.7:00

真・桃太郎 その1  O氏

桃太郎を書いてみませんか?
1学舎廊下で見つけた投稿物。要は自分で桃太郎の「アナザーストーリー」を作って出せば良作は表彰されるというやつだ。
さてさて、そんな面白そうな奴。やるしかないではないか。ヽ( ´ー`)ノ
と、勇んで文章作成。よし、とりあえず下書き完成。で、これはどこにだせばいいのだ?
と、再び1学舎前に行った僕の目に飛び込んできたその応募条件
      「新しい桃太郎の明るいお話
しっ、しまった〜〜〜

こ、この話、超シリアルーーーーーー!!!!!

没。

というわかで、使いまわし 再利用します。今月のウイークリーコンテンツは、
「ANOTHER STORY OF MOMOTARO」

真・桃太郎 です  では、はじまりはじまり〜


『桃より産まれし選ばれし者。』
『神が与えし御子。』

人々の期待が私の胸を苦しめる。
私は物心ついたときにはすでに【特別な子】として周りから育てられていた。
私を拾い養ってくれたおじいさんおばあさんは、決して私を特別扱いしなかった。まるで本当の息子のように、時には優しく時には厳しく私に接して育ててきてくれた。
しかし、周りの人間は違った。私が特別な生誕をしたこと、私が他人よりも力が強く剣技に長け、そして動物と会話できるという特別な力を持っていたこと。その事が私自身に対して周りの人間からの抱えきれないほど大きな期待を受けた。
私に友がいたのは十の頃までだった。年を進めるたびに自分自身に恐怖を覚えるこの力、人というものを超えた反射神経、そして何事にも順応していく能力。この力に対し大人たちは「天才」だと崇め、同年代の子ども達には「世界の違う人」「怖い」と距離をおかれる。結果、私はいつも独りだった。そんな私に何の感情もなく近づいてくる存在、動物。私の孤独を紛らわしてくれる存在は彼ら動物だった。そして、少しもたたないうちに私は自分が動物と会話できる能力がある事に気づく。
キジに台風の襲来を事前に教えられたおかげで、村は被害を最小に食い止めた。
サルに鬼が村を襲おうとしている事を教えられ、村は食料・穀物を隠し無事に済んだ。
イヌに鬼の住処を教えてもらい、人々は海岸に防衛線を張る事ができた。
そして、人々は私をほめた。私にとってほめてもらう事はかつての友や村のみんなからまた距離を置かれる事を意味する。嬉しくなかった、むしろ悲しかった。だが私の心の声は誰にも届かない。私の本当の声を聞いてくれるのは動物たちだけ。

大方予想はしていた。いずれ来る話だとはわかっていた。
15の年を迎えたある日、村の人々が大量の穀物・産物を積んで家の前にやってきた。そして私に言った「鬼を退治してほしい」と。
度重なる海岸での防衛戦で村人も鬼も疲れきっていた。次に鬼が来た時には破られるかもしれない。逆に今攻めれば鬼も疲弊しきっているから打破も容易い。村長は私にそう言った。
「今日はもう遅いので、一晩待ってもらえませんか。」
私の言葉に村の人々は涙を流しながら喜んだ。
その夜、食事の時おじいさんとおばあさんに自分の気持ちをうちあける。私の最大の理解者であり、私を育ててきてくれた二人に。
「私は、今回の戦いはあまり気持ちがすすみません。もし仮に今回の戦いで私が勝利したとしても、今度はまた別の戦いが私の前に現れるでしょう。そしてそのままきっと私は戦争の道具になってしまいます。私はたくさんの人を殺め、そして最後は戦場で命を失うでしょう。」
3人だけの家には広すぎる食卓。20畳以上の冷たい部屋が普段以上の冷たい静かな空気に変わる。
「私はそんな未来を望んではいない。」
そうだ。私は普通の人でありたい。友達と遊び、みんなと学び、そして恋をし、結婚する。そんなありきたりな暮らしに憧れてはいけないのだろうか。他の人とは違った扱いを受け、いつも対等に話もできなかった。その事に喜びなど一つもなかった。常に私の中は孤独で満たされていた。
「桃太郎。村人はお前のことを英雄と呼ぶ。」
おじいさんが、重い口を開く。
「お前は、自身が望んでもないのに英雄になってしまった。そして英雄になってしまったお前に世間は一般人として見ていない。恐らくこの事をお前が声を大にして叫んだとしても誰もお前の見方を変えたりしないだろう。」
「・・・・・・・・・・・はい。」
「だが、それはこの村の村人達に関してはだ。」
「? そ、それはどういう?」
おじいさんとおばあさんが優しく微笑みかける。
2人の顔は共にとても優しい笑みにつつまれていた。その目は優しく語っていた、ここからどうすればいいかはお前もわかっているだろう、と。
「15年間、私たちはあなたを育て、一緒に暮らせてきたことを嬉しく、誇りに思いますよ、桃太郎。少し寂しいかもしれないけど、でも私たちもあなたの苦しむ姿をこれ以上見たくはないのです。あなたが幸せになること、それが私たちの願いなのですから。」
「おばあさん・・・・・」
頬に一筋、熱いものが流れる。もうこれからする事はわかっていた。それが、自分の願いであり、自分を愛し育んでくれたおじいいさんおばあさんの願いであるなら。
決心は、できた。
「おじいさん、おばあさん、私は鬼退治に行って参ります!」

その2につづく!!