【Weekly企画】真・桃太郎 その2 2003.08/09 p.m.7:00

真・桃太郎 その2  O氏

その1のつづき

翌朝、私は村人全員に見送られ村をたつ。村長は誰か同行させようかと言って来たが私は断った。私にはどの村人よりも私を理解する動物たちがいる。そして、何より今回の旅は誰かがいると困る。
出発時、おばあさんがくれた袋いっぱいの吉備団子。一日もあれば行ける鬼ヶ島にこんなにいらない。これだけあれば一週間は食べるものに困らないだろう。
おじいさんもおばあさんも今回私がしようとしている事をわかっているのだろう。ならば、私はなんとしても鬼を退治し、そして自分の目的を果たさなければいけない。
私は固く心に誓った。そして、今目の前には大きく広がる海がある。

鬼との攻防、体格が我々の2回りも3回りも大きく身長が2メートル近くあり、金の髪をもち、怒ると白い顔が真っ赤になる、理解の出来ない言語を話す存在。見た目から明らかに我々と異なる存在である彼ら。しかし、噂ほど強い存在ではない。恐らく一般人でも2人がかりで戦えば勝てなくもないだろう。
鬼の数は20ほどだった。男の鬼、女の鬼、まだ少し幼げな鬼。私は彼らを倒した。奇声をあげて飛び掛ってくる彼らを私は薙ぎ、村の平和のためと謳い斬る。
そして、最後の鬼を倒した。
「グギャァァァァ」
倒れる最後の鬼、彼が倒れたすぐ後ろに洞窟がある。多くの鬼が必死になって守った堂靴の入り口、この奥に村人から奪い取った食料や物資があるのだろうか・・・
そして洞窟に足を踏み入れようとした瞬間、
「オギャア オギャア オギャア!!」
「赤ん坊の声!?」
洞窟の奥から赤ん坊の声が聞こえてくる。
「こんな所から赤ん坊の声が聞こえてくるなんて。鬼にさらわれてきたのか?」
しかし、奥に足を踏み入れた私の目の前に広がっていた光景は私の予想を大きく裏切ることになった。
「こっ、これは!?」

「な・・・・・、これは一体どういうことだ!?」
村長はその手紙を見て驚いた。
桃太郎が1週間しても帰ってこない事に不安を覚えた村長が村人ともに向かった鬼ヶ島。
辺りに鬼の屍が転がり、この島には死を漂わせる匂いが充満していた。
そして、村長たちを迎えたのは桃太郎と共に出立したサルだった。
サルに引っ張られ連れて行かれた洞窟、そこには一通の手紙が置いてあった。
『 村長。村民の皆さんへ
私はこの島に上陸し、20を超える鬼と戦い、そしてこの同靴の奥にいた最後の鬼と戦い打ち破ることが出来た。
しかし、最後の鬼との戦いで私の半身は食い破られてしまった。恐らくもう少しで私の命は尽きるだろう。
私は村の英雄として、皆の前に自分の屍を晒したくない。この気持ちをわかって欲しい。
私は海の藻屑となります。どうか悲しまないようお願いします。   桃太郎』
この悲観の報告にその場に居合わせた人は皆泣いた。英雄を失ったこと。鬼が退治されたこと。悲しみに包まれた勝利の報告はその日中に村に広がった。

その3につづく!!