【Weekly企画】真・桃太郎 その3 2003.08/10p.m.7:00

真・桃太郎 その3  O氏

その2のつづき

数年後。
村は活気に満ちていた。
この村は伝説の英雄桃太郎の住んでいた村として近隣からたくさんの旅人が訪れていた。近隣には桃太郎は生き残り金銀財宝を持ち帰ってきたという話が流れているらしく、一目桃太郎にお会いしたいという人が多くいるが、戦いの全貌を聞き、おじいさんおばあさんの家の前にあるお墓にお参りして帰っていく。
また、街には吉備団子をはじめとする多くの桃太郎関連品が売れていた。
あの悲しいできごとは村人の心からだいぶ消えつつあった。
そしてある日の夜。
おじいさんおばあさんの家に一羽のキジが飛んできた。そのキジは、あの時桃太郎と共に鬼ヶ島に行ったあのキジであった。
そのキジの首には手紙がくくりつけてあった。おじいさんおばあさんはキジを家の中に入れ、その手紙を読む。

おじいさん、おばあさん。いかがお過ごしでしょうか。
今、私は遠く離れた地で畑を耕して暮らしています。
この地で私に友達はいません。しかし、私には家族がいます。
私はかの地で最後の鬼を倒した後、その奥の洞窟で鬼の赤ん坊を見つけました。
しかし、私のみつけた鬼の子は肌の色や髪の色は違いますが、たしかに人間でした。
鬼の子は1人だけではありませんでした。産まれてまもない赤ん坊から3つぐらいの子まで、6人の子がいました。私はこの子らを斬ることができませんでした。
稀にですが、村でも髪が茶色い子が産まれることがあります。もしかしたら、この鬼と呼ばれる者も同じ人なのではないのだろうか、私はそう思います。
遠く離れた、海を越えたどこかには髪が金色や赤色の人や、肌の色が白や黒の人がいてもおかしくないのではないでしょうか?
そして、島の裏にあった大きな船の残骸。これも彼ら鬼がどこかの地から海を越えてこの島に漂流した証なのかもしれません。
私は彼らが村から食べ物を強奪したりしていたのは生きるためにやむなくやっていた事かもしれないと、そう思いました。現に彼らは言葉も通じず、我々は彼らを見ただけで鬼と言って逃げます。結局、そのことが彼らに強奪以外での方法以外おとれないかたちにしたのだと思います。
そして、赤ん坊のいる洞窟を必死に守っていたあの鬼の姿はまさしく人の親の姿なのではないかと思います。
私は、今6人の子の親として過ごしています。いま、初めて親の大変さがわかりました。私を育ててくれてありがとうございます。
もう、会えるかどうかはわかりませんが、いつまでも元気で    桃太郎』
おじいさんとおばあさんは喜び合った。自分の子が元気に暮らしていること、幸せであることに。
キジは一晩その家で休み、そして返事の手紙を首にくくりつけ飛び立った。

その4につづく!!